へんとうたいはきゅうせつ
この現象が偏桃体の機能を変質させる効果を持つ事に気付いたのは偶然の産物だった。
感情発信プロセッサの研究がまだ都市圏で盛んに行われていた時代。
生存本能に深く関わる偏桃体の送受信が及ぼす恒久的な精神状態に着目した研究者たちが、この効果を意図的に制御出来ないかと考えたのは自然の流れだったとも言える。
生存を司る感情の一つ、恐怖。
五感から入力される情報を電子的に制御し、この根源的で強い感情を恒久的に発生させ続ける。
慣れる事の無い新しい恐怖を常に与え続け、それによりソフト面で強化された感覚器は、常人とは比べ物にならない精度を叩き出した。
ハード面での変更が一切必要無く、非常に低コストな手段ではあったが、適用者のメンタルヘルスを著しく害し、汎用性に富まず、当時行われていた研究は既に全て凍結されている。
感覚器の強化という点においては優れていた為、一部企業ではそのノウハウを生かして別の事業に使われたりもしている。
当然ながら、本州政府は人道的観点からその存在を赦してはいない。